『ロード・オブ・ザ・リング』の前章を描くホビットシリーズの第二弾、『ホビット 竜に奪われた王国』は、前作の、『ホビット 思いがけない冒険』をはるかに凌ぐスケール感とアクションが満載の一級エンターテイメント作品となった。
前作が、旅に出立するまでの時間もじっくり描くような、シンプルでほのぼのとした作品だったのに比べ、二作目は、賑やかできらびやかな豪華さが特徴。『ロード・オブ・ザ・リング』からの再登場となったレゴラス(オーランド・ブルーム)や、彼の父のエルフ王スランドゥイル(リー・ペイス)、紅一点のタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)などエルフ陣の麗しさが目を引く上、新登場のバルド(ルーク・エヴァンス)のイケメンぶりも嬉しい。
旅の舞台になる中つ国を忠実に再現。スクリーンに吸い込まれるような気分を味わえる臨場感は見事だし、今回は特にアクションシーンの切れ味の良さが爽快だ。一つ一つの動きが、見惚れるほど決まっている。
作品のテーマは、ずばり”美”なのだと思う。竜の姿態は、まばゆく、同時におどろおどろしい。また竜の巣を広大に埋め尽くす黄金や宝の山を見ると、そこにあるのは美しさへの賛歌ではなく、漂っているのは、飽くなき欲望や、破滅につながる執心なのだと感じられる。前作では圧倒的な気高さや存在感を見せつけたドワーフ王子のトーリンも、権力の象徴であるアーケン石を意識した途端、心が揺れてしまうほどだ。
今回は、意外な組み合わせの恋愛模様や三角関係も登場してくる。本筋とは関係ないものの、世界観をふくらませる寄り道的な意味で楽しめた。
そんな中、冷静に使命を果たすために真っ直ぐに突き進んでいくのはホビットのビルボだ。一人でストーリーを動かしている様に見えるほど、きっちりと主役の勤めを果たしているのに、なぜか華やかな周囲に埋没している感がある。それはドワーフ王子のトーリンも同じで、前作ではあれほど魅せてくれたのに、かなり地味だ。中心の二人が霞むほど、ストーリーの起伏や、登場人物の人間模様や背景が、分厚さを増しているのだと思う。
ドラマ性もダイナミックに深まっている。第三弾、『ホビット ゆきて帰りし物語』へと繋がっていく高揚感と、焦燥感に満ちた流れには興奮させられる。第三弾の公開が待ちきれない人、シリーズ三作品をまとめて見たい人が、今後増えるのは確実だと思う。もちろん、私もその一人だ。早く見たくてたまらない。 (オライカート昌子)
ホビット 竜に奪われた王国
2013年 アメリカ・ニュージーランド映画/ファンタジー・アドベンチャー・ドラマ/161分/原題:THE HOBBIT: THE DESOLATION OF SMAUG/監督:ピーター・ジャクソン/出演・キャスト:イアン・マッケラン(灰色のガンダルフ)、マーティン・フリーマン(ビルボ)、リチャード・アーミティッジ(トーリン・オーケンシールド)、ベネディクト・カンバーバッチ(スマウグ)、オーランド・ブルーム(レゴラス)、エヴァンジェリン・リリー(タウリエル)、リー・ペイス(スランドゥイル)、ルーク・エヴァンス(バルド)ほか/配給:ワーナー・ブラザース
『ホビット 竜に奪われた王国』公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitdesolationofsmaug/